海外活動報告
シンシナチ報告(2004年11月1日)
今回のアメリカ合衆国オハイオ州シンシナチ行きは、わたくしが 2004 年 8 月から行っている MIS +ナビゲーションシステム手術の勉強のためでした。 Dr. Michael L. Swank はアメリカにおけるナビゲーション手術の先駆的医師の 1 人であり、まだ 43 歳と若く精力的に診療を行っています。人工股関節と人工膝関節手術が年間合わせて 400
例あり、そのほとんどはナビゲーションを使用して手術をしています。股関節はもちろん MIS+ ナビゲーションシステムです。
シンシナチのダウンタウン
当月号の地元の雑誌「 CINCINNATI 」の表紙に。$ 3.95
当日は朝 7 時から 6 例のナビゲーション手術が行われました。わたくしはそのうち 5 例に立ち会いました。手術は Dr.Swank 、 2 名の手術助手看護師、 1 名の手術器械出し看護師、の計 4 名で行われました。医師は Dr.Swank1 名のみですが、看護師はみなベテランで完璧に人工関節手術に慣れており、厳粛として 4 名があたかもひとつの有機体のようにスムーズに行われました。 Dr.Swank
は皮膚切開から人工関節挿入まで終わると、すぐに向かいの手術室に入り 2 番目の手術を開始します。
その間およそ 45 分間。つまり、2つの手術室を交互に利用しているわけです。皮膚縫合は看護師が行います。手術の効率的運用に驚嘆いたしました。わたくしが勤務している病院では 1 日 2 件です(午前 1 件、午後 1 件)。手術時間は MIS+ ナビゲーション人工股関節でおよそ 90 分間であり、わたくしと Dr.Swank
に差がないのですが、手術の間の時間ロスが著しいわけです。アメリカ行きの飛行機の中で読んだ日本とアメリカのシステムの比較について書いた本の影響もあり、日本とアメリカの組織運営の違いに愕然としました。ぜひ改善したいものです。
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手術計画の打ち合わせ
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ナビゲーションを使用する事により安全で正確な手術が可能になった
手術手技、股関節 MIS +ナビゲーションシステムに関しては、使用しているナビゲーションの機種が違う以外に、わたくしが現在行っている方法と相違はありません。ナビゲーションによる人工関節の位置設定が正確であることをお互いに確認しあいました。クリーンルームや防護服の着用といったハードウエアはわたくしの勤務病院のほうが充実しています。ちなみに人工股関節の MIS+
ナビゲーションシステム手術を行う医師はアメリカ全土でも数名程度しかいません。日本ではほかの施設では行われていないようです。
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夜の食事でもディスカッションが続く
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夜の会食での記念写真
Dr.Swank の勤務形態について補足します。彼は整形外科医 12 人で診療している Freiberg Orthopaedics & Sports Medicine という日本でいう診療所の院長です。ここはベッドをもたないクリニックですので、別の場所にある The Jewish Hospital で手術をするわけです。手術日は週に 2 日、 1 日 6 - 8 件程度(!)の手術数で、術後 2 日後に退院することが多いとの事です。
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Freiberg クリニック
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セラピストの方達と患者さんの手術後の心のケアーについて話を伺う
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The Jewish Hospital
再生医療の発達により将来は人工股関節が不要になる可能性があります。しかしながら、人工関節との治療成績の比較など、結果が出るまでに少なくとも 10 年以上はかかるでしょう。現在、末期の変形性股関節症やリウマチの患者さんの治療には人工股関節が最も確実・安全な治療法と考えます。クリニカルエビデンスに基くならば人工股関節は少なくとも 10 年間は有効です。
わたくしは今後も MIS による人工股関節治療を続けていくことを、今回のシンシナチにおける研修で再確認いたしました。
シンシナチ空港にて