海外活動報告
ゲルニカ2025(2025年2月6日~7日)
久しぶりにスペインの病院を視察しました。訪問したのはマドリッドにあるClinica Cemtro(セムトロ・クリニック)という病院で、関連病院を含めるとマドリッド市内に4か所あります。
最初に見学したのは本院で整形外科以外にも診療科がある総合病院で、写真1、ベッド数96、このうち整形外科は24ベッドで、整形外科医は30人以上在籍しています。
最初に見学したのは本院で整形外科以外にも診療科がある総合病院で、写真1、ベッド数96、このうち整形外科は24ベッドで、整形外科医は30人以上在籍しています。
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写真1
開設者はPedro Guillenペドロ・ギエン教授です。今年87歳になるのに現役です。
外傷、関節鏡を専門としており、サッカー選手のマラドーナやサガン鳥栖でもプレーしたフェルナンド・トーレスも診療したとのこと。写真2。
外傷、関節鏡を専門としており、サッカー選手のマラドーナやサガン鳥栖でもプレーしたフェルナンド・トーレスも診療したとのこと。写真2。
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写真2
訪問した日は8時の整形外科カンファレンスから始まりました。8時前に着くと部屋にはサンドイッチ、パン、コーヒーがありました。写真3。
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写真3
ギエン教授と歓談の後、写真4、出席者に紹介されました。写真5。
写真4
写真5
この日は膝の骨壊死についてのレクチャーでした。もちろんスペイン語で行われるのですが、スライドに書いてある医学用語のスペイン語は英語とラテン語の知識があると容易に分かりました。
カンファレンス後、9時すぎに手術室に入りました。男性が近づいてきて、「はじめまして。わたしはアントン・デニソフです。」と日本語で自己紹介しました。聞けばロシアから留学している医師で、その前には半年間札幌医大にも留学していたとのことで、わたしが札幌から来ましたと言うとびっくりしていました。脊椎外科を専攻しているとのことです。写真6。
カンファレンス後、9時すぎに手術室に入りました。男性が近づいてきて、「はじめまして。わたしはアントン・デニソフです。」と日本語で自己紹介しました。聞けばロシアから留学している医師で、その前には半年間札幌医大にも留学していたとのことで、わたしが札幌から来ましたと言うとびっくりしていました。脊椎外科を専攻しているとのことです。写真6。
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写真6
最初に、ギエン先生が開発したワイヤレス膝関節鏡の見学をしました。カメラと光源がワイヤレスでコードが不要というのが売りで、スペイン以外にも日本を含む世界各国で特許をとったそうですが日本は未導入です。久しぶりに半月板切除術を見学しました。87歳にもかかわらず片手で患者の片脚を挙げて動かしていました。写真7、写真8。
写真7
写真8
次に車で10分ほどのCemtroクリニックの分院FisioCLub&Sports でリハビリテーションを見学しました。写真9。
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写真9
責任者のFernando Garcia Sanz医師が案内をしてくれました。写真10。
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写真10
ここは設備が充実しており、写真11、筋電図や関節角度計を利用した歩行解析も行っており、訪問した時には人工膝関節後の患者の分析をしていました。写真12、写真13。
写真11
写真12
写真13
また、レアル・マドリッドなどのスペインのサッカーチームの選手(メッシやロナウドも!)も来院したことがあるのこと。ポスターにはCemtroクリニックがFIFA(国際サッカー連盟)が認めた優れたメディカルセンターで推奨するとありました。写真14。
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写真14
本院に戻り病院のレストランで昼食。写真15。
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写真15
スペインといえばシエスタ、日差しが強い13時から16時に休憩をとる習慣です。最近では廃れてきているようですが、スペインでは昼食は通常13時からで、夕食は21時とのことでシエスタの名残でしょうか。
食後病棟見学をしました。Cemtroクリニックは私立病院ということもあり、全室個室です。マドリッドでは新しく建設される病院は全室個室が義務付けられるようになったとのことです。
午後の手術は(シエスタの影響か)15時患者入室より始まります。しかし、麻酔医がなかなか来ず実際は16時から麻酔が始まりました。基本的に腰椎麻酔のみです。股関節外科を専門とするLuis Novoa Rodriguez(ルイス・ノボア・ロドリゲス、40歳ぐらい?)医師が執刀。写真16。
食後病棟見学をしました。Cemtroクリニックは私立病院ということもあり、全室個室です。マドリッドでは新しく建設される病院は全室個室が義務付けられるようになったとのことです。
午後の手術は(シエスタの影響か)15時患者入室より始まります。しかし、麻酔医がなかなか来ず実際は16時から麻酔が始まりました。基本的に腰椎麻酔のみです。股関節外科を専門とするLuis Novoa Rodriguez(ルイス・ノボア・ロドリゲス、40歳ぐらい?)医師が執刀。写真16。
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写真16
ノボア医師は履歴によると2023年245件、2024年295件の人工股関節手術を行っており、2023年より後方から前方進入法に替え、ロボット手術支援システムMako(日本ではメイコーと発音するが、スペインではマコでした)を使うこともあるとのことです。前方進入法で使用することがある牽引台は利用していないとのことです。
1件目は後方進入で左側に対して人工股関節置換術(THA)を行いました。写真17、写真18。
1件目は後方進入で左側に対して人工股関節置換術(THA)を行いました。写真17、写真18。
写真17
写真18
15㎝位の皮切での通常法です。人工股関節を挿入し終わるまで30分ほどで後方軟部組織の修復も行い55分ぐらいの手術時間でした。皮膚縫合はキューバからきた医師が行っていました。スペイン語が公用語のキューバ人医師は診療はできないのですが手術助手は可能で術創を縫合するのが彼の役目でした。この病院には3人の股関節外科医が在籍していますが、各々に専属の医師(助手専門)がいるそうです。手術は執刀医、助手1人、器械出し看護師2人で行われます。
2件目は左股関節に対して前方進入法で人工股関節置換術を行いMakoは使用しませんでした。写真19、写真20、写真21、写真22。
写真19
写真20
写真21
写真22
カップの固定がうまくいかなかったのでスクリュー2本で固定していました。大腿骨ステムを挿入するに際しては、骨切り部の挙上のため後方関節包などの後方組織を切離していました。前方進入法は筋肉を切らないので回復が早い、後方関節包を切らないので脱臼しないと主張する医師が多いのですが、やはり実際は切っていました。手術時間は1時間以上かかりました。ノボア医師はこの後も2件の手術がありました。午後3時から4件の手術、場合によっては6件の手術を行っているので、手術日は帰宅時間が22時から23時とのことで、働き方改革が進む日本では到底不可能なシステムでした。
午後から手術を受ける患者は手術当日に入院し、48時間後(2日後)退院というスケジュールで、退院後は特にリハビリテーションの通院はなく(当クリニックも同じ)、一部の患者がFisioCLub&SPorts に通うとのことです。3日間の入院手術治療費は15,000ユーロ(日本円でおよそ240万円)、日本では10日間入院で180万円程度ですからスペインの方がはるかに高額です。
午後から手術を受ける患者は手術当日に入院し、48時間後(2日後)退院というスケジュールで、退院後は特にリハビリテーションの通院はなく(当クリニックも同じ)、一部の患者がFisioCLub&SPorts に通うとのことです。3日間の入院手術治療費は15,000ユーロ(日本円でおよそ240万円)、日本では10日間入院で180万円程度ですからスペインの方がはるかに高額です。
「ゲルニカ」はスペインの画家パブロ・ピカソが1937年に描いた絵画で、ナチス・ドイツ空軍による無差別爆撃を受けた都市ゲルニカを描いています。反戦を主題とした最も有名な絵画といって良いでしょう。現在はソフィア王妃芸術センターに展示され、今回のマドリッド訪問を契機に見に行きました。同芸術センターはゲルニカによってスペインでもっとも入館者数の多い美術館になったそうです。牡牛、馬、灯火、剣、母子、太陽などのモチーフには、それぞれ象徴的な意味があるとのことです。この原稿を書いている現在、ウクライナ戦争、ガザ地区戦争が続いています。黒や灰色で描かれているゲルニカを見ていると戦争のない時代はあり得ないのではと暗くなってしまいました。写真23。
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写23