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海外活動報告

海外活動報告

倫敦訪問2025(2025年9月11日~13日)

英国の病院を訪問するのは2006年、2009年、2017年に次いで4回目になります。当初予定していた訪問病院は直前にキャンセルされ、手術見学もできなかったので、大英帝国は少しいい加減な国になってしまったようです。機内泊を含めて3泊の海外出張は日程的にきついのですが、それでも有意義なものです。今回は初めての試みとして、当日お会いする医師に質問表を渡して回答してもらいました。質問内容は以下の通り。
  1. 年間手術件数は?このうち再置換術は何件ですか?
    What is your annual case volume, and of these, how many are revision procedures?
  2. 進入方法は?
    Which surgical approach do you use?
  3. ロボットやナビゲーションを使っていますか?
    Do you utilise robotic assistance or navigation systems?
  4. 手術時の助手は何人、医師?看護師?
    How many assistants are present during surgery, and are they doctors or nurses?
  5. 1週間のスケジュールは?何曜日が手術日で、何曜日が外来日ですか?
    What does your weekly schedule look like? On which days do you operate, and on which days do you hold outpatient clinics?
  6. どちらの病院で外来を行い、どちらの病院で手術をしているのですか?
    At which hospital do you conduct outpatient clinics, and at which hospital do you perform surgery?
  7. 患者の入院期間は?
    What is the average length of hospital stay for your patients?
  8. 退院後リハビリに通院する期間は?
    After discharge, for how long do patients usually attend rehabilitation as outpatients?
  9. 退院後の患者は定期的に診察を受けますか? 頻度は?
    Do your patients continue to receive regular follow-up after discharge, and if so, how frequently?
Miss Sarah Murihead-Allwood

彼女とは2006年にも会っています(英独訪問記2006をご参考にしてください)。19年ぶりの再会です。わたしより10歳ほど年長ですから70歳代ですが、まだ診療をしています。わたしが開業するときにはかなり参考になりました。外来診療は彼女が運営するLondon Hip Unitで、手術はPrincess Grace Hospital(127床 私立)で行っています。London Hip UnitとPrincess Grace Hospitalは同じ建物にあります。回答は以下の通り。

  1. 現在120から130件の人工股関節手術。2006年訪問した時は毎年700件と言っていましたので大分減らしています。彼女は1971年はじめて人工股関節手術に立ち会い、1977年から執刀医になり、いままでの累積人工股関節手術件数は16,000件、わたしは今年で11,000件になるのですが、ちょっと追いつけない。わたしの手術件数はおそらく日本で一番多いのですが、上には上がいます。
  2. わたしと同じMIS―後方進入で、前方進入などのほかの手術方法は行ったことがないそうで、やはり後方進入は安全に手術を行えるからとのことです。
  3. ロボットやナビゲーションシステムは使用していないとのこと。わたしの頭脳がナビゲーションと冗談を言っていました。
  4. 手術助手は2人。医師、フィジシャン・アシスタント、ナースが行います。
  5. 水曜日:手術4件、木曜日と金曜日は外来診療。ということは土曜日から火曜日はお休みです。しかしながら70歳後半で一線にいるのは素晴らしいと思いました。
  6. 手術はPrincess Grace Hospitalのみ。2006年時は公立病院でも手術を行っていましたが、現在はここだけ。ちなみにLondon Hip Unitには5人の医師が在籍中です。
  7. 水曜日午前入院し、翌木曜日退院。つまり1泊2日の入院です。日帰り手術は行っていないとのこと。日帰り手術するのには午前5時に入院し、午前中に手術、午後退院ということで批判的でした。
  8. 10日間程度。
  9. 手術してから3週後、2または3か月後、1年後、5年後

すでに引退した男子テニス選手アンディ・マリー(英国)は全米オープン1勝、ウインブルドン2勝、オリンピック2連覇の名選手でしたが、右股関節痛で2018年股関節鏡による手術を受けましたが痛みが軽快せず、2019年表面置換型人工股関節手術を受けました。その執刀医が彼女です。2024年マリーは現役を引退しましたが、人工股関節手術後5年間プレーに復帰したのは素晴らしいことです。わたしも表面置換型人工股関節手術を行っていましたが、現在日本では使用することができずこのタイプの手術を行うことができません。

  • Miss Sarah Murihead-Allwoodとわたし

Mr. Harish Parmer

ロンドンから車で1時間30分の所にあるスパイア・ハーペンデン病院(Spire Harpenden Hospital、79床 私立病院)のMr. Harish Parmarを訪問しました。彼とのミーティングは7時30分から病院のカンファレンス室で朝食を食べながら行いました。

  1. 人工股関節:120件(うち再置換10件)、人工膝関節:120件
  2. 後方進入のみ。20年間後方進入で手術を行っているが脱臼は3件。
  3. ロボットやナビゲーションシステムは使用していない。
  4. 手術助手は1人。医師、フィジシャン・アシスタント、ナースが行う。
  5. 月曜日午後:外来(5人から20人)、火曜日午前:手術2~3件、午後:外来、水曜日午前:手術2~3件、午後:外来、木曜日午後:外来、金曜日午前・午後:なし。
  6. 外来、手術ともにスパイア・ハーペンデン病院でのみ行っている。
  7. 入院当日に手術、翌日退院。1泊2日。
  8. 患者の状態に応じて術後6から8週のリハビリ通院(毎日ではない)。
  9. 手術後6週目で外来診察し、以降は問題なければ定期的経過観察なし。
  • 病院正面玄関

  • Mr. Harish Parmerとわたし。札幌のお土産を差し上げました。

  • ミーティング。ミーティング後、Mr. Parmerに病院を案内してもらいました。

  • 病室。この病院は私立病院ということもあり、個室または2人部屋です。
    もっとも1泊2日の入院期間ですから、実際病室にいるのは数時間でしょうか。

  • シャワールーム

  • ナースステーション

  • 診察室

  • リハビリ室

  • 手術室

  • さすが英国。中央待合室には紅茶セットが置いてあります。

参考までにわたし自身の回答は
  1. 2024年では人工股関節のみ528件、うち再置換術10件
  2. MIS-後方進入
  3. CT-ナビゲーションシステムを使用
  4. 手術助手;1人、器械出しナース:1人
  5. 月、水、木曜日:終日手術2~5件。火、金曜日:終日外来診療。
  6. 外来診療は石部基実クリニック、手術は協力病院(現在は札幌ススキノ病院)
  7. 入院、翌日手術、手術後8日間入院(リハビリのため)。平均10日間入院。
  8. 土、日、休日も含め入院中は毎日リハビリテーション。退院後は自宅でリハビリ。
  9. 手術後6週目で外来診察、1年後もしくは3年後。以降3年毎に診察。
  • 英国では犬の散歩場面が多く見られました。

  • ミスター・ビーンとわたし

  • ロンドンのデパートといえば老舗ハロッズ

  • ハロッズ内のフードコートの天井。豪華です。

  • ハロッズで食べた塩ラーメン。税込み31.9ポンド(約6,400円)。高いと言われているニセコのラーメン(2,000~3,000円)と比べても2倍以上の高級麺です。味は普通。

ところで、Sarah Murihead-Allwood医師とHarish Parmar医師の呼称を、Dr.(doctor)ではなくMiss 、Mr.(mister)にしているのは英国での医師の呼称に独特の歴史的背景があるからです。一般的な呼称であるGP(General Practitioner、一般開業医)や多くの内科系医師は、通常どおり Doctor(Dr.) と呼ばれます。医学博士号(MDやPhDなど)を持っていなくても、英国では医師免許を持つだけで「Dr.」と呼ばれるのが一般的です。しかしながら、外科系医師の場合は、歴史的に中世のイギリスでは外科医(Surgeon)は医師(Physician)とは別の職業で、もともとは理髪師(barber)が切開や抜歯などをしていた経緯があります。そのため外科医は「Doctor」ではなく Mister(Mr.)/ Miss / Mrs. / Ms. と呼ばれる伝統が残りました。つまり、外科系の専門医(整形外科、一般外科、心臓外科など)は、研修中は「Doctor」ですが、外科の専門医資格を取得すると、再びMr./Ms./Mrs. に戻る慣習があります。
ということで、私は人工股関節(整形外科)の専門なので、英国であれば「Mr. Ishibe」と呼ばれる立場になる、ということになります。